特集 教育制度と看護教育
大学教育とはどういうものか
吉本 二郎
1
1東京教育大学
pp.8-11
発行日 1964年9月1日
Published Date 1964/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905344
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大学の目的,性格
戦前の学生は制服と制帽に身を固め,エリート意識を強く漂よわせていたのにくらべ,現代の学生はそれと対蹠的に,セビロと無帽で市中にハンランしている。大学の中味も相当に変わった。かつては官立大学への女子の入学は認められなかったのに,今や女子学生亡国論までとびだすほど,女子の大学進出はめざましいものがある。ことに文科系の学部では顕著な事実が認められる。このような外面的な変化を拾いあげれば,際限なく問題となる点が浮んでくるのであるが,それらの背景には世相の推移とともに,基本的な高等教育の制度的な変遷が存在するのである。
わが国の高等教育に関する現行制度は,敗戦を契機として旧来のものから,いちじるしい転換をみせていること,それがアメリカ合衆国の制度に大きな影響を受けたものであることは,一般によく知られているところである。戦争中までの日本の大学教育は,時代の波に洗われながらも,基本的にはヨーロッパ大陸の大学制度にその原型を求めてきたといらことができる。ことにドイツの制度なり理念なりが,わが国の場合に支配的であったといってよい。そこでは学問の研究と,専門的、な学術の教授ということとが,大学の果たすべき使命とされていたのである。
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