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拙著「Juvenile Spring Eruptionの1例」(本誌,37(3);263,1983)について佐藤吉昭氏より,本症はpri—maryのphotodermatosisか,あるいは背景に何らかの病態があってnon-primaryにphotoaggravateされているのかという点と,polymorphous light eruptionと同様に北陸,北欧などの寒冷地方に多いのは何故か,という2点について質問をいただいた1).このことについては筆者も同様の疑問を持ちながら論文に記載しなかった点もあり,本症の病態についての基本的な問題を指摘されたと考えるので,本欄をお借りして若干の知見を述べてみたい.
まずprimaryのphotodermatosisか否かの問題である.ここでのprimaryのphotodermatosisとはRamsay2)の分類のidiopathicのものを指し,Bruckhardt3)の分類ではLicht und endogener Faktor wirksamに入れられたものを指すと考える.この項にはpolymorphouslight eruption, summer prurigo, hydroa vacciniformeなどとともにRamsayはjuvenile spring eruptionを記載し,またBruckhardtもFrühlingsdermatoseという病名を用いて記載している.問題は本症を多形滲出性紅斑の1型とする考えである.筆者は本症と多形滲出性紅斑は発疹の部位,発症の時期などから区別すべきであるとした.特に自験例のごとく耳にのみ生じた場合は独立疾患としての意義を持つと考える.しかし本症は組織学的に多形滲出性紅斑あるいは急性エリテマトーデスを思わせる所見があるとの報告もある4).またRyan5)は本症患者の手背に典型的な多形滲出性紅斑の皮疹が生ずることがあると記載している.Baran6)も手背,顔面,前腕に多形滲出性紅斑様の皮疹が出現すると記載している.Ramsay2)の分類によると多形滲出性紅斑はidiopathicではなく,diseases aggravated by sunlightの項に分類されている.この項にはrosacea, herpes simplex, lupuserythematosus, lymphocytomaなどがある.本症の病因が確定していない現在,結論は不明であるといわざるを得ない.しかし発症の状況,臨床症状などから本症はdiseases aggravated by sunlightに分類される疾患群よりは,polymorphous light eruption, summer prurigo, hy—droa vacciniformeなどにより近い疾患と考えられる.いくらかの内的要因はあるにしても,紫外線およびそれ以外の気温,気圧,湿度といった外的因子の方が発生因としてより重要であると考えたい.
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