特集 自由討議—その必要性と現状
クラス討議のめざすもの—発言力をもった民主的な人間を育てる
堀川 直義
1
1朝日新聞社調査研究室
pp.5-7
発行日 1963年5月1日
Published Date 1963/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904366
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ゆたかな人間性を持つために
現代はマスコミ時代といわれ,マスコミは一定のニュースをいっせいに同時に通達するだけでなく,人間の思考を画一化するキライがある。多くの人がものの考え方や,考えの方法論が同じような形になるということは,ゆたかな人間性を失わせることになる。それを救うためには,画一的なものを外から押しつけられるのではなく,みずからの考えを成長させる必要がある。しかしながら自分だけでものを読んだり考えたりしている場合には,独断になったり,ひとりよがりに落ちいったりすることになる。そこでお互いの考えを話し合ったり,討論したりする必要性が生まれてくる。
また,民主主義の社会というものはそれを構成している人々が,それぞれ自分の意見や考えを遠慮なく述べあえることでなければならない。構成メンバーが言いたいことも言えず,一部指導者のいいなりになってしまうということは,少なくとも民主主義とは言えないだろう。そのためには,構成メンバーが自分の考えを卒直に述べうる能力を養わなければならない。封建的な社会ないしはそのにおいの強い集団では,卒直に自分の意見を述べることがはばかれる。そのような条件のもとでは自由な発言や自由な討論は不可能である。では,どうしたらそういう発言不自由の事態を是正することができるか,これを是正するためには,みんなが自由な発言力を持たなければならない。つまりこれでは,堂々めぐりの理論になってしまう。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.