教材
日本近代女性史—第15回 現代女性の展望
福地 重孝
1
1和洋女子大
pp.45-48
発行日 1962年11月1日
Published Date 1962/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904293
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家庭の女性
家庭における女性は,今や伝統的な「家」から解放されて,家政内における人間関係や生活条件を具体的に新しくうちたてることがのぞまれるようになってきた。これまで男性の従属的地位にあった女性にとっては,家事労働の場だけが女性の才量のきくところであり,それも家事労働の価値の認識が低く評価されたところから,いっそう女性の地位を弱いものにしていた。ところが生活の民主化の風潮と,女性自身の自覚と,女性の社会的進出,更にそれにともない消費革命は都市及び農村に共通の現象として,家事労働を軽減する傾向にある。とくに女性のめざましい社会的進出によって,男性側の態度も変ってきたことは確かである。家事労働についての労働の価値について,あらためて再認識の要がジャーナリズムに提起されてきた。
家計の運営に関しては都市と農村,農家と非農家とでは,主婦の役割に大きな開きがあるが,男の手に完全に財布を握られている主婦は農家でも少なくなり,中小工場労務者の家庭では,給料を全部主婦に渡すものが86%であり,「150円亭主」の出現などが,ジャーナリズムで騒がれるようになり,核心家族の形態では家計の実権はますます主婦に集中してゆくであろう。
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