グラフ
これでいいのか病院の待合室
pp.52-54
発行日 1960年12月1日
Published Date 1960/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903951
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都内の大きな病院をめぐってみて,その待合室のあり方にすっかり首をかしげてしまった。これでいいのだろうか。
内科,外科,産婦人科,小児科といった各科の診察室の前で,おとなしく順番を待っているのは,いうまでもなく病人であり,その病人の付添人たちである。気分の悪い人もいるだろうし,傷の痛む人もいるだろう。その人びとが,廊下の両側にならべられた公園のベンチさながらの,粗末な長椅子に目白押しにならんでいる。それでも腰掛けられればいい方で,ラッシュ時には多くの人が立ちん坊でシビレをきらしている。たいてい照明がうすぐらく,新聞や雑誌さえろくに読めない陰気さである。あまつさえ元来が通路であるから,いろいろな人の往来がはげしく,ホコリっぽくて不衛生きわまる。夏はムンムン人いきれがして暑苦しく,冬は冬で不完全な暖房にガタガタふるえていなければならない。まったく病院の待合室というのは,どうしてこうも雑然と汚ならしく非情なのであろうか。そこには病人に対するやさしい,いたわりの配慮といったようなものは,すこしも感じられない。
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