特集 患者経験を通して看護教育を考える
患者の自己決定権の尊重を
患者体験から看護・看護教育を考える
松山 洋子
1
1順天堂医療短期大学
pp.931-935
発行日 1995年11月25日
Published Date 1995/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903725
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はじめに
筆者の職業人生は,看護教育から始まった.その後臨床経験,介護福祉士教育を経て,昨年,再び看護教育に携わることになった.その間の看護界の変化には目を見張るものがある.看護教育の高学歴化によって,看護の頂点はどんどん極められている.このことによって日本の看護のレベルは確実に向上してゆくであろう.
しかし,必ずしも学問の向上に伴って,実際の看護が変化しているとも言い切れないのが現実ではないだろうか.わが国では1970年代から諸外国の看護理論家の種々の理論が盛んに導入され,看護教育の中に「患者中心の看護」はすっかり定着した.現在,就業している看護婦の80%はおそらくこの「患者中心の看護」で教育されてきた人々であると推測できる.筆者も看護教育に携わっていた時,また臨床看護婦をしていた時,患者中心の看護を教育し,実践していると信じていた.しかし,突然患者という立場に立たされた時,今まで自分たちが考えていたことは,健康者の立場に立って,健康者の論理で考えていたのではないか,と実感する場面があった.
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