連載 生活空間論 生命のみなもと・6
落差を埋めるために(3)―中間領域の重要性
外山 義
1
1京郡大学大学院・居住空間工学講座
pp.426-429
発行日 2001年6月25日
Published Date 2001/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902512
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前回は,高齢者施設の個室化をめぐる言説の検証を行いながら,地域から施設へと環境移行をした高齢者にとって,身の置き所としての個室を保障することの重要性について述べた.折りから,4月8日と10日の読売新聞全国版に,国が特別養護老人ホームの全室個室化を視野に入れているとの報道があり,様々な方面を巻き込んだ議論が起こり始めていて,タイムリーであった.
しかし,たとえ全ての居室を個室化しても,そこに本人が大切にしている所有物が持ちこまれず(筆者はこれを「一人部屋」と呼んで個室とは区別している),高齢者自身にとって心安らげる身の置き所が形成されなければ,それは保護室か独房にすぎない.また,個室の外の空間が貧しくただ真っ直ぐな廊下が続いているだけであれば,入居者間の自発的な交流は容易には醸成されない.今回は,この居室間の関係,居室と共用空間の関係,共用空間のあり方などについて,読者のみなさんと考えてみたい.
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