特別寄稿
患者の心を考える―助産婦のマンマ体験を通して(1)
藤末 やす子
pp.386-391
発行日 2001年5月25日
Published Date 2001/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902505
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乳房ほど多くの意味や象徴をあてがわれた身体の部位もありません.アメリカ女性研究者のマリリン・ヤーロムは著書「乳房論―乳房をめぐる欲望の社会史』の中で乳房を「聖なる乳房」「エロティックな乳房」「家庭的な乳房」「政治的な乳房」「心理分析上の乳房」「商品化された乳房」「医学的乳房」「開放された乳房」「危機にある乳房」の9つに分類しています.
助産婦である私にとって,乳房は母と子を結ぶ,いわゆる「生命を育てる乳房」であり,いつも側にありました.臨床助産婦を経て看護教育の場に変わり,母性看護のみならず精神科看護にも携わり,フロイトのいう「心理分析上の乳房」も実感しつつありました.「乳がん患者の看護」も担当しましたが,「生命を脅かす乳房」としての認識は薄かったように思います.それは,まだ私自身がこれから子供をもつ年齢だったこと,そしてこれから子育てにかかわる年齢だったことが関係していると思います.そして,何よりも健康だったので「生命を脅かす乳房」は全く論外でした.しかし,30代の最後に“乳がん”という人生の伴侶をもつことになりました.
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