特別寄稿
子供はかわいい—助産婦の分娩体験記
北原 隆子
1
1北原助産院
pp.38-43
発行日 1970年11月1日
Published Date 1970/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204012
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36週目の症状
今日も朝から5〜6分ごとに,腹緊が感じられる。痛みもなく,それ程強くもない。下腹部は,グンと重圧感を覚えるようになった。しかし,腹緊状態はそれ以上に進行する様子もないままに,午後を迎えてしまった。
午前の仕事を終えて,ホットした食後の休息を,テレビドラマを見ながら,姑と2人で向い合い「今日は,朝から5〜6分ごとにお腹が張ってくるけど,このまま陣痛開始しちゃうかしら」。「どうもあやしいヨ。近々のうちだから,必要なものをまとめておいた方がいいよ。どうも2,3日前からの顔付きが変ってきたから」。「でも,まだちょっと早いですし」。「今生まれれば,3キロはあるでしょうが,後10日は待ちたいネ」。「まあ無理しないで,もう少し大事にしましょうよ」と話し合いながら,できあがったベビー服に,可愛い,刺繍をと思い,イニシャルの"K"を縫い取り始めた。産着まで2組の刺繍を終わり,紐の位置も決めて,夕方までには,すっかりできあがって,いつ生まれても間に合うようになっていた。
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