時事を読む
臓器移植法成立から3年―シンポジウム報告
向井 承子
pp.699-703
発行日 2000年8月25日
Published Date 2000/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902340
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
この10月,臓器移植法が施行から3年目の秋を迎える.この法には,成立当初から「3年後の見直し」が掲げられているため,論議がにわかに活発化,すでに厚生省の研究班による「3年後の見直しに向けての提言」も報告されている.その内容は,第1に「脳死を人の死」とし,第2に「本人があらかじめ臓器提供を拒む意思を表明していない限り,遺族の意思で臓器の摘出ができるようにしよう」とすることで,子どもの脳死移植にも道を開こうとするもので,「脳死を一律に人の死としない」で,臓器提供には「本人意思の原則」を掲げる現行法の基本理念を大きく変える提案として,早くからメディア等で報じられることとなった.
この4月18日,衆議院議員会館内で開かれたシンポジウム,「臓器移植法成立から3年,いま改めて脳死と臓器移植法を問う」も,この流れを受けたものには違いない.ただし,こちらは,現行法がつくられる過程で,「脳死を人の死」と法制化することに疑問を持ち,問題提起を続けてきた市民グループと,「脳死を人の死としないが移植には道を開く」対案を提出した国会議員たちとの共催である.「3年目」に向けての論議の主流が,臓器提供の機会をいかに広げるかという便宜に陥っているため,立法過程で積み残された数々の論点を,3年の実績を踏まえて改めて語り合うことを目的としていた.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.