連載 景色の手帳・8
二階の窓
武田 花
pp.694-695
発行日 2000年8月25日
Published Date 2000/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902339
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暑い昼下がり。駐車場の隅の陽だまりに寝ている猫を眺めていたら、コチン……。私の頭の天辺に何か物体がぶつかり、地べたを転がった。見れば、青いプラスチックのざる。驚いた猫はすっ飛んで逃げていった。辺りを見回し、さらに上方も見上げてみると、私の背後に建つ二階家の開かれた窓の奥から、バッタバッタと騒々しい物音が。きっと、あそこから落ちてきたに違いない。何をやってるんだ、この家は。
家の周囲には物がいっぱい落ちている。汚れたコケシ、空瓶、枯れた花束、へこんだ鍋、割れたコップ、煙草の吸殻、ミッキーマウスが描かれたTシャツ、らくだ色の猿股、それに座布団まである。割れ目から綿がはみ出し、雨に当たったのか、びしょびしょと濡れている。
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