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科学の窓
pp.70-71
発行日 1956年11月1日
Published Date 1956/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201163
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原子力
20世紀は原子力の時代といわれる.それはこの世紀にわれわれ人類は原子力という新しい火を手に入れたからである.文明が進むに従い,人類のエネルギーの使用量は加速度的に増大し,後100年もすると地球上の利用し得る石油,石炭を使い尽してしまうという際であるので,新たなるエネルギー源を見出すことは人類にとつて焦眉の急であつた.幸いにして人類は原子力という劃期的なエネルギー源を手に入れたのであるが,この意義深い原子力が原子爆弾として利用され,広島,長崎において歴史上比類のない殺傷を,又放射能症という新しい症状の病気を残したことは残念であつた.しかしこれが契機となつて原子力の研究は進み,われわれの生活に直接寄与する為のいわゆる平和的利用の途が開かれた.今まで水力と,石炭,重油による火力発電に代つて原子力発電がわれわれに電力を供給されようとし,原子力船による大洋横断,又は原子燃料を作る際の副産物である放射性同位元素(ラジナアイソトープ)が医学,農学方面に大いに利用されていることなどは衆知のことである.
原子力がどんなものであるかを理解する為には,原子そのものを知る必要がある.
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