扉
窓は開いている
pp.13
発行日 1958年6月15日
Published Date 1958/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910615
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おさえても,おさえても後から後から湧きあがつて来る卒業のよろこびを,未知の社会に船出する不安と興味を錯そうさせながら,兎に角学窓を巣立つて実社会にとび出して来て,ただ,無我無中で働き,新らしい職場に馴れることに努力をつづけ,何,彼にと一つ一つ指示されることも独りで働けるようになつたこの頃であろうと思います。学生時代には,早く卒業して独立すれば,自由に働けるし,自分のしたいことも出来るし,試験はなくなるし,何にも束ばくされるものがなくなるから,早くそうなりたいと,羨しく思つていたことだつたでしように,さて,その身分になつてみるとどうでしよう。学生時代にうらやましく思つてみていたのは,生活の片面だけであつたということ。
独立した社会人としてのナースになつてみれば,それだけに負うべき責任の重いこと社会人としての制約もあり,ナースとして感ずる困難の数々が認識されはじめて来たことと思います。むしろ,学院という特別なトリデでまもられていた学生時代のよさ,学生であるが故のプリビレジをなつかしむ思いがわきあがつて来るでしよう。でもこの道は誰もが一度は通らなくてはならない道ですし,皆が感ずる思いなのです。この道を通りすぎるとはじめて本格的な社会的広場となるのです。
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