特集 臨床教育に『イチロー君』活躍する
ベッドサイド教育の重要性と『イチロー君』の開発
高階 經和
1,2
1社団法人臨床心臓病学教育研究会
2アリゾナ大学医学部
pp.346-349
発行日 2000年5月25日
Published Date 2000/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902253
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私が臨床心臓病学を選んだ契機
私が神戸大学医学部を卒業したのは1954年3月で,それから1年間,当時大阪にあった第382米国陸軍病院でインターンとして勤務しました.ちょうど,朝鮮戦争が終結した頃であり,毎日ヘリコプターで運ばれてくる傷病兵たちの多くは,砲弾の破片が体に入ったままであったり,戦場で四肢の一部が吹き飛ばされていたりと,様々な戦争外科を体験しました.私は生来手先が器用だったせいか手術も面白く,整形外科医になろうかと考え始めていました.
そんな米国陸軍病院でのインターン生活が終わりに近づいたころ,内科の軍医大尉として配属されて来られたのが,心臓病専門医であるジェームス先生(Thomas N. James, M. D.)でした.彼の診察を見て,私は目を見張りました.頭部から始まり,頸部の視診(頸静脈波の観察や甲状腺腫の有無,そして異常所見の有無)に始まる系統的な診察法は,完壁であり,胸部の触診や聴診に至っては「私は大学の時,いったい何を習ったのだろう?」と恥ずかしくなってしまいました.患者の診察法について,私が何も知らなかったことを思い知らされたのが,このジェームス先生との出会いでした.当時の日本の医学教育に問題があったのは言うまでもありません.それから46年経った今もこの問題が解決されたとは言えない状況ではないでしょうか.
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