時事を読む
精神科医療における法と自己決定―とくに移送に関する条項をめぐって
永野 貫太郎
1
1永野・間辺法律事務所
pp.331-333
発行日 2000年5月25日
Published Date 2000/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902250
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はじめに
昨年6月に公布された「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律」に基づき,この4月から移送制度が実施されます.そこで本稿では移送に焦点をあて,精神科医療における自己決定の問題について考えてみたいと思います.
精神科治療においても,患者の自己決定の権利―自己のうける治療やケアについて,自らの判断に従って決定を下す権利は,他科の治療を受ける患者と同じく,基本的に認められなければなりません.例えば,国連総会の決議である「精神病者の保護及び精神保健ケアの改善」(精神障害患者の人権―国際法律家委員会レポート,明石書店刊)の原則11では,例外として規定される場合を除き,治療は患者のインフォームド・コンセントなしには行われない旨規定し,インフォームド・コンセントの定義を詳細に規定し,1)患者に提供するべき情報としての診断の見立て,2)治療目的・治療方法,およその治療期間および予想される効果,3)他に考えられる治療方法,4)治療で生ずる苦痛,不快感,危険性及び副作用等々とし,このような情報を提供した上で,脅しや不適当な誘導を行うことなく,患者が理解しうる書式と言葉を用い,自由意思により得られた承諾―つまりインフォームド・コンセントを得た上で治療が行われなければならないとしています.
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