コラム:医事法の扉
第47回 「一般条項」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.303
発行日 2010年3月10日
Published Date 2010/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101138
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- 文献概要
医療行為の過失の有無は,通常,当該行為が当時の臨床医学の実践における医療水準に照らし,危険防止のために経験上必要とされる最善の注意義務を果たしていたかどうかで判断されます(「未熟児網膜症事件」,最高裁平成7年6月9日判決).この場合の「注意義務」とは,善管注意義務(民法644条)を指します.しかし,医療者が負担するのは注意義務だけではなく説明義務などもあり,それぞれの外延が不明,あるいは,法には直接規定がないケースもあり,このとき,「一般条項」が適用ないし補助的に使われることがあります.
「一般条項」とは,法律行為の要件や権利行使の方法などを抽象的・一般的に定めた法規定をいいます.具体的には,民法1条2項「権利の行使及び義務の履行は,信義に従い誠実に行わなければならない」,同3項「権利の濫用は,これを許さない」,90条「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は,無効とする」,民事訴訟法2条「当事者は,信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない」などがあります.特に,民法1条2項と民事訴訟法2条は「信義誠実の原則」(略して「信義則」といいます),90条は「公序良俗の原則」としてそれぞれ原則化されています.
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