連載 論より生活・3
老いをみんなで
頼富 淳子
1
1(財)杉並区さんあい公社
pp.238-239
発行日 2000年3月25日
Published Date 2000/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902232
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35年間営業の仕事をしていた女性が痴呆症になった.客との待ち合わせを忘れる,重要な書類を紛失する,などのミスはあったらしいが,それでも会社は辞めてほしいとは言わなかった.65歳になって,自分でも多少の不都合を感じていたのか,友達が辞めると聞くと,自分もと言い出し,さっさと退職した.趣味はなく,会社以外の人との付き合いもない.家事は嫁のE子さんが万端やってきたので家にいるようになるとたちまち手持ち無沙汰になり,行きづまってしまった.
今まで目立たなかった生活の障害が24時間そばで見ていると,家族にもただごとではないとわかってくる.今言ったことを忘れる,今までしていたことがわからない,落ち着かずじっとしていられない,思いついたように急に出て行き,迷子になる.
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