特別寄稿
救急医療の抱える問題とこれからの課題
奥村 徹
1
1川崎医科大学救急医学
pp.986-993
発行日 1999年11月30日
Published Date 1999/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902165
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救急医療について語る前に,僕が救急医療に従事することになった原体験から紹介しよう.大学5年の冬休み,僕は試験勉強の合間に,ちょっとした気分転換のつもりで沖縄県立中部病院にエクスターンとして見学に行ったのだった.1週間のあいだ,僕は救急センターのレジデントについて救急室に張り付くことになった.
病院に着いた時点ですでに心肺停止状態の患者.患者に懸命の蘇生を試みる医師.傍らで常に適切な診療の流れを作る看護婦.クリスマス会から帰宅途中の子供の列に居眠り運転の乗用車が突っ込み,続々と運び込まれる重症の子供たち.彼らの手にはクリスマスのおもちゃがあった.行き倒れのアル中患者.バイク事故でなくなった青年と,その遺体にすがって号泣する家族.傷を縫う処置の間,叫び暴れまくる子供.治療室でしっかり手を握りあう無理心中未遂の親子.自殺目的に液体入浴剤をがぶのみし,息もたえだえになって運ばれる女性.誤っててんぷら油に火が回り,上半身火だるまとなり運ばれる主婦.子供の診察の順番が回ってこず,待たせすぎだと待合室の長椅子を振り回して暴れる親.
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