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在宅看護のルーツ―初期派出看護を探る
坂本 玄子
1
1看護史研究会
pp.398-401
発行日 1998年5月25日
Published Date 1998/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901838
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はじめに
明治半ば,最初のトレインド・ナース(Trained Nurse,訓練を受けた看護婦=近代看護婦)を世に出したのは,慈恵,桜井,同志社の3校でした.パイオニアだった初期の卒業生たちの活動,特に派出看護婦としての彼女たちの毅然とした,自立した看護実践の姿は,改めて職業人としての看護婦の仕事の魅力と気概を学生に考えさせたようです.かつて100年あまりも前の時代,看護制度もなく女性の社会参加や職業をめぐる条件がきびしかった時代の派出看護婦であるのに,その学習が複雑に発達した現代の医療制度下での訪問看護婦活動への意欲に結びつくことに,私はいつも深い感慨を抱くのです.
在宅看護への舵取りが,形になってはっきり世に見えてきたのが,1991年制定,翌年4月から施行された改正老人保健法にもとづく「老人訪問看護ステーション」だといえましょう.それ以前の外来患者への病院からの訪問看護や,それ以後の老人以外の訪問看護の保険点数化やオプションでつけ加えられる多様な訪問看護も加わって,患者の要求によって在宅で看護婦による看護が受けられるようになってきた今日,介護保険制度も焦眉の急となり,なおいっそう在宅看護問題は国民全体の関心事となっています.「在宅看護論」が新しい科目として看護基礎教育にとり入れられ,これから在宅看護論実習も始まります.
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