特集 いま,ケアとは何かを問う
ケアの原形・ナイチンゲール看護論を現代に生かす―看護であるものとないものを見分ける眼を育てる
金井 一薫
1,2
1ナイチンゲール看護研究所
2日本社会事業大学
pp.807-811
発行日 1997年11月25日
Published Date 1997/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901704
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はじめに
F. ナイチンゲールは,1860年代に人類史上初めて“看護とは何か”というテーマに接近し,その定義づけを行なった.彼女は「看護覚え書』の中で「私は他によい言葉がないので看護という言葉を使う」1)と述べて,当時一般的に行なわれていた貧民による貧民の看護の実態や家庭内看護のあり方を批判し,本来の看護の姿を説いたのであった.したがってこの時以来,「看護=nursing」という言葉には特別な意味が付与されてきたのである.
そこで筆者は,ナイチンゲールによって発見され,表現された看護のあり方をもって「看護の原形」と呼ぶことにした.「原形論」は,物事の本質や元の姿,また事の始まりにおいて志向した内容や方向性を明らかにしていくときに有効となるもので,今ここで原形の発想を紹介するのは,過去30年に渡って様々な看護論を導入し,それらを消化するだけで精一杯だったわが国の看護界の事情を省みるにつけ,原点に戻る意義を感じるからである.
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