連載 待合室で僕は・5
「クローン羊」に想うこと
大西 赤人
,
大浦 信行
pp.328-329
発行日 1997年5月25日
Published Date 1997/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901606
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最近,僕が大いに好奇心をかき立てられた出来事として,いわゆる「クローン羊」のドリーが英国で誕生したとのニュースがあった.
「クローン(clone)」とは,“単一の細胞を培養して作られた遺伝的に同一の細胞群”(三省堂『コンサイス外来語辞典』)を意味する.もちろん昔は空想の域を出ず,僕が子供の頃にも,SFタッチの小説や漫画の中でしばしば見かける夢物語に過ぎなかった.しかし,『もし自分の細胞から複製が出来上がったら?』という想像には興味を駆られた.当然,肉体的に全く同一であっても,後天的に形作られた感情や記憶は受け継がれないはずだが,それでもやはり,その複製は“大西赤人”ということになるのだろうか?また,もしも次々に数多くのクローンを作りつづけたら,個人の「死」はなくなるのだろうか?そんなことをあれこれ考えていたものだ.
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