連載 癒しの環境・20
病院食だからこそ
高柳 和江
1
,
クミコ・クリストフ
1日本医科大学(医療管理学教室)
pp.602-603
発行日 1996年8月25日
Published Date 1996/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901421
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病院の食事は,根本から考え直す時期に来ている.病院の食事の一般目標は,①体力をつけることと,②食事によって慰め,生きる意欲を生じさせること.病院食は食べてこそ一般目標が達成される.残されることの多いメニューは廃止した方がいい.病院の食事に箸をつけず,売店で買ってきた梅干しをそっと棚から出して食べるなんて,悲しい.熱があるときは,のどごしのよいそうめんが食べたい.シャーベットやアイスクリームもいい.定番のあげだし豆腐の鶏そぼろかけに,くたくたになったほうれん草のおひたしをつける必要はないのだ.回復に向かって鰻を食べたいときだってある.病院食だからといって病状にかかわらず同じ食事を出すのはやめたほうがいい.元気になるのなら,1回1回の食事に目くじらたてることはない.1日単位で,患者さんの生きる意欲がわくかどうかで考えよう.病院食だからこそ,病気で落ち込んでいるときだからこそ,食事に慰めや癒しの要素が必要なのである.
固形食物に対する欲求のあらわれは食欲または飢餓感という.生命維持のための本能的な感覚であり,食物の種類は問わない.空腹により視床下部の摂食中枢(視床下部外側核)の興奮と飽満中枢(視床下部内側核)の抑制がおこり,また胃に飢餓収縮から空腹感が発生する.食欲は空腹感に並行し,空腹感は食欲の重要な因子であるが,両者は厳然と区別される.
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