連載 病床環境理解のための12の課題・3
人間集合と病室空間
課題1:多床室におけるプライバシー[後編]
川口 孝泰
1
1兵庫県立看護大学
pp.536-540
発行日 1995年6月25日
Published Date 1995/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901138
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多床室における入院患者のプライバシー
多床室で入院生活を過ごす患者は,限られたベッド周辺の空間でプライバシー欲求の異なる様々な生活行為を余儀なくされている.入院前までの生活では,「私たちの家」という家族(集団)のプライバシーの場があり,家の中では「私の部屋」「トイレ」「風呂場」など,個人のプライバシーが守れるような場が設定され,自らの選択によってプライバシーは充足できていた.しかし入院後は,治療・看護上の制約から,それらのプライバシーが確保しにくくなるため,多くの患者たちは入院前の生活とのギャップでストレス状態に曝されることが多い注).
多床室の中で入院患者がどのような生活行為を営むかは,そこでどのようなプライバシー欲求があるかを知る手がかりとなる.図1は筆者が多床室(4床室,6床室)における入院患者の生活行為を,ワークサンプリング法を用い調査した結果である1).患者は病室内で約85%,病室外で約15%の時間を過ごしていた.病室外では,廊下の椅子に腰掛けていたり,外来にまで出かけたりするなどの行為が多かった.これらは,多床室の中で得にくい個人のプライバシーを求めた行為であると考えられる.
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