連載 人間と教育・10
ずれとはなにか
上田 薫
1
,
加藤 由美子
1前:都留文科大学
pp.724-725
発行日 1993年10月25日
Published Date 1993/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900669
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ずれというものを私はきわめて重要と考えているのだが,なかなかわかってもらえぬように思えて残念である.“ずれている”とか“ずれてしまった”とか,むしろ悪い意味で使われることが多いのである.そこには,思うようにならぬ,失敗したという感じさえこめられている.だから私が,実践にとって不可欠の大事な要素で発展の基盤になるなどというと,いぶかしげに首をかしげる人がほとんどなのである.
多くの人は,目標を達成するということのとらえ方があまいのではないであろうか.目標がそっくり実現できるなど,本来めったにあることではない.ずれはそこに生まれる.そのずれを見逃さず,なんとしても克服しようと問題追究を深めることこそ,誠実な研究姿勢であり,創造の本道なのである.そこがずさんで皮相に流れれば,うまくいったはずなのにと,あとでいくら悔いても及ばないことになる.
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