特集 セクシュアリティと看護教育
看護教育における「性」に関する教育の現状と今後の課題
高村 寿子
1
,
松本 鈴子
1
,
松本 清一
1
1自治医科大学看護短期大学
pp.731-736
発行日 1992年10月25日
Published Date 1992/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900461
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はじめに
本来,人間の生活にとって性(セクシュアリティ)は,男として,女としての自認のもとに生きていく原動力であり,たとえ健康障害の状態にあるとしても,生きる根源にセクシュアリティがあってそれは自然である.高齢者,慢性疾患患者,ハンディ・キャップを持つ人などの増加は,セクシュアリティに関するニーズを機能的障害だけでなく,心理的あるいは社会的な性役割行動の欠如など実に多種多様に潜在・顕在化させている.そのような人々のQOLの実現を支えていくには,セクシュアリティを尊重した医療や看護が不可欠であり,そのためには,まず看護者自身がセクシュアリティに対して正しい理解や認識を持つことが望まれる.その上で看護の対象である人間のセクシュアリティについての深い理解と受容が生まれてくると言えよう.今回20数年ぶりに実施されたカリキュラム改正により,この視点が『精神保健』に柱立てされ,各教育機関で授業が展開されている.しかし概観する限り,「性」に関する科目の位置づけや教育目標,開講学年や時期,担当講師の選択,教育内容や教育方法および評価など試行錯誤の状態のようである.そこで本年2月,MT社の協力のもとに各看護学校や短大・大学が,性に関する科目をどのように展開しているか,その現状と問題点を把握するために調査を実施した.そこで得られた若干の興味ある知見を報じ,看護教育,中でも教育内容に焦点をあてこれからの課題を展望してみたい.
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