特集 これでよいのか准看護教育
准看護婦制度と「看護教育」―教育と研究をめぐる一考察
林 千冬
1
1東京大学医学部保健学科保健社会学教室
pp.186-190
発行日 1992年3月25日
Published Date 1992/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900351
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私にとっての「准看問題」
私が准看護婦養成所に入学したのは,もう10年近く前のことになる.大学生活を経験してから,あらためて准看養成所に入り直したという経歴の私にとって,准看学生としての生活は,あらゆる面でショッキングなことの連続だった.私自身の経験もさることながら,大半が高校を出たての妹のような同級生たちが,苛酷な就労と決して恵まれているとは言えない教育の中で日々を送る姿に,同じ年頃の大学生の生活と比較しては,絶えず胸を痛め憤りを感じていた.けれどもそんな中だからこそ,多くの友人たちと,看護や仕事のこと,恋のこと,そして将来の夢など,さまざまなことを時間を惜しんで語りあった思い出は,今も私のかけがえのない財産である.
私自身はそのまま「進学コース」に進み,やがて准看護婦制度のアウトサイダーになった.けれども,准看学生時代の経験や,「進学コース」時代以降勤務してきた様々な病院で見た准看学生や准看護婦たちの実態に感じた問題は,たとえ自分が看護婦資格を取得しようと大学で看護教育を受けようと,いつまでも拭いされぬものとして残った.そうした思いに真正面から向き合ってみようと,最初に取り組んだのが「准看護婦養成所学生の就学・就労の実態」と題する調査研究である.これもすでに4年以上前のことになる.
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