特集 学生・教員が元気になる 心理的安全性
学習者の可能性を引き出すかかわりとは
内藤 知佐子
1
1愛媛大学医学部附属病院総合臨床研修センター
pp.578-583
発行日 2023年10月25日
Published Date 2023/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202149
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授業において、なぜ心理的安全性は重要なのか
授業において求められる教員のかかわりは、ファシリテーターとしての役割を果たすことだととらえています。ファシリテーターとは、「個人やチームがもっている力を最大限に引き出しながら、限られた時間のなかで、場の目的達成に向けて支援する人」1)のことを指します。学生は、可能性を秘めた存在です。その可能性を引き出すのが教員の役割です。そのためには、目の前にいる学生は力がある存在だと信じてかかわることが、まず大切になります。というのも、教師からの期待の有無によって、学生の成績が変化したという実験結果があるからです。これを、教師期待効果(ピグマリオン効果、またはローゼンタール効果)といいます。どうしても教員と学生の間には、評価する人―評価される人という力関係が生まれます。この権威勾配を強く感じてしまうと、学生の緊張は高まりパフォーマンスは低下します。逆に、フラットな関係になり過ぎても、パフォーマンスは低下するのです(ヤーキーズ・ドットソンの法則、[図1])。
心理的安全性の大切さを伝えると、“学生と仲良くなること”と解釈される場合がありますが、それは違います。エドモンドソンは、「心理的安全性はグループの人間関係上の環境における1つの構成要素であり、責任もまたそうした構成要素の1つである」2)と述べています。私たちがめざすのは、[図2]にある“学習”のゾーンです。学習者としての責任、そして看護師という仕事を担う者に求められる責任を課しつつも、心理的安全性を担保して学習者がもつ可能性を最大限に引き出していくかかわりが求められているのです。
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