特集 看護実践につながる専門基礎科目の教授法
助産師養成課程における臨床推論力の育成―専門基礎科目の知識を基盤として
伊藤 美栄
1
1国立病院機構京都医療センター附属京都看護助産学校 助産学科教育
pp.830-836
発行日 2020年9月25日
Published Date 2020/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201568
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昨年10月に公表された看護基礎教育検討会報告書1)では、助産師養成課程においては、ハイリスク妊婦が増加しており、さまざまなハイリスク要因をかかえる対象者に対応する能力を強化するために、「助産診断・技術学」については、周産期のメンタルヘルスやハイリスク妊産婦への対応、正常な妊娠経過を診断する能力、正常からの逸脱の判断や異常を予測する臨床判断能力、緊急時に対応できる実践能力を養うために現行の8単位から2単位増の10単位とすることが明記された。正常からの逸脱の判断や異常を予測する臨床判断能力については、臨床での経験をとおして経験知として獲得されていくことが多い。したがって、助産師養成課程において、そのような臨床での思考と判断能力の基礎を学生時代からどのように育てていくのかが課題である。
周産期の臨床場面では、正常に経過している妊産婦でも途中で異常に移行することが少なくない。そのような異常が最初からわかることはまれで、患者の訴えや症状の経過から少しずつ全体像がわかってくる。したがって、まず診断に必要な情報を系統的かつ効率的に集め、予測される疾患の鑑別を行いながら徐々に診断をしぼり、処置を決定していく。この思考過程は臨床推論とよばれ、医師が診断の決定、治療法の選択、予後を予測するときに行っている。助産師は妊娠経過の診断については医師の臨床推論を共有していると言ってよい。助産師は、正常な経過においては主体となって診断しながらケアを行っており、正常からの逸脱、異常への移行が疑われる場面では、医師が診断するためのデータを収集し報告するなどして、医師と連携・協働している。
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