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はじめに
「生活機能」という用語は、昔からあったような、なかったような、わかりやすいようで、わかりにくい言葉である。混沌としていたこの用語が、はっきりとした形であらわれ、大きな意味をもつようになったのは、2001年5月に開かれたWHOの総会でICF (International Classification of Functioning, Disability and Health)が採択されてからのように思われる。これは、国際疾病分類(ICD)の補助として1980年に示された国際障害者分類(ICIDH)の改訂版である。5月の採択を受けて、6月には厚生労働省において、ICFの日本語訳の検討会が学識経験者や専門家によって開催された。検討会を重ね、関連する学術団体や専門職団体等への意見聴取を経て「ICF日本語版」が完成し、2002年8月に厚生労働省のホームページで公表されるに至った1)。ICFは「国際生活機能分類」と訳され、「生活機能」という言葉がクローズアップされるようになった。
生活機能という用語は、心身の機能・構造の破綻がもたらす機能の低下に焦点を当てるのではなく、もっと広く健康をとらえるという概念に基づいている。すなわち、「生活機能」とは心身機能・構造だけではなく、活動と参加を含む包括的な用語であり、病気(疾病)や変調、障害があっても、活動・参加できるという点に焦点を当てるものである。その人らしく活き活きと生きることに重心を置き、〇〇があれば△△できるというポジティブな点を評価するのである。たとえば、腕がリンパ浮腫で腫れあがっていても、リンパドレナージや包帯圧迫法、精神面・社会面での「強み」の強化という看護支援があれば、日常生活を円滑に過ごすことができるようになり、生活するうえで“おしゃれ”もできるようになるといったことである。
この生活機能という概念は、まさに看護の役割、すなわち「人々が健康的な生活を営み、その人らしく生きることを支援する」2)ことに通じるものである。本稿では、看護の視点から「生活機能」の教育について一考する。
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