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連載のねらい
質的研究には,グラウンデッド・セオリー・アプローチや解釈学的現象学等のさまざまな研究方法があり,その方法論についても多様に論じられている。これは,各々の研究テーマやその目的に応じて方法が選ばれるためであり,それゆえに,質的研究一般に関する統一的な基準は存在しないとしばしばいわれている。だが,質的研究の前提として,研究の基礎的な事態があるのではないだろうか。このことを明らかにすることが,本連載の第1の目的である。
続いて考えてみたいことは,看護における質的研究に応じた知のあり方である。看護研究のテーマは「ケア」という非常に独自の事柄であり,この点を踏まえないと研究自体の大枠が定まらないであろう。
以上の問題に関して哲学や社会科学等に依拠しつつ,基礎的な事態に戻って考えてみたい。看護における質的研究の発展に少しでも役に立てればと願う。
第1回の内容
質的研究の正当性は徐々に認められつつあるが,しかし,完全には承認されていない(髙木,2011, p.iv)。まず質的研究に対する代表的な2つの疑問を確認する(第1節)。そして,現在の看護研究の2つの基本書,Polit & Beck(2004/近藤監訳,2010)とBurns & Grove(2005/黒田,中木,小田,逸見監訳,2007)註1における質的研究の前提を検討する(第2節)。というのは,これらの議論には自然科学的な思想が分有されており,それゆえに,これらの議論は看護における質的研究(そして看護実践)に必ずしも適合しているとは考えにくいからである。続いて,看護における質的研究の前提的事態(言語性)と,研究の基本的な主題(意味)に触れて(第3節),最後に,今後の連載の内容を予告する(第4節)。
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