エトランゼ
頭そろえて尻そろえず
常田 正
pp.383
発行日 1987年4月1日
Published Date 1987/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204056
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「頭かくして尻かくさず」ではない,頭をそろえて尻をあえてそろえないのがAmerican punctuality(アメリカ式時間厳守)なのである.なにしろ‘Time is money’のお国柄であり,1時間いくらという時間給が賃金の基本となる国である.時間を大切にするという点ではもって範とすべきものがある.会議や集会の際にはきめられた集合時間に全員がきちんと集合する.日本のように××村時間などと称して30公も1時間も遅れてやっと全員がそろうなどということはない.
アメリカ式では金員がそるっている集会の初めのうちに重要議題を終えてしまう.終わりをまたずに途中で退席する人がちらほらいる.次の集会に遅刻せぬためである.日本の伝統に従うと初めのうちは世間話ていどで,終わりに近づくにつれて議案は重要度を増し,議論は白熱化して行くので終わるまでは帰れない.したがって,次の会合にも遅刻することになる.頭をそろえず尻のほうをそろえるのが日本式である.どちらがよいのか早急に判断はしがねるが,アメリカ式を真似て,始まりの時間厳守を強制しておきながら終わりのほうは日本式にいつはてるともわからぬという「頭もそろえ尻もそろえる」日本産働き蜂のやりかたには賛成できない.
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