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映評 ─『臨床判断 気づくトレーニング』全3巻─”気づき”を確かな推論につなげるための思考過程を養う教材
池西 静江
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1Office Kyo-Shien
pp.481
発行日 2018年6月25日
Published Date 2018/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201001
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基礎教育では,長年「看護師としての思考」を育てることに力を注ぎ,なかでも,「看護過程」という科学的な問題解決思考を中心にした,個別的な看護実践につながる看護の方法を大切にしてきました。しかし,医療環境の変化のなか,「看護過程教育」は単なる思考のトレーニングに終わっているという指摘も挙がるようになってきました。この指摘については「看護過程教育」の本質ではなく,教授方法の問題であろうと思います。
しかし,このような「看護過程教育」のみで,「看護師としての思考」が育成できるかと,疑問を抱くようになってきました。具体的な課題は「臨床状況の変化」にともなう思考・判断の弱さです。看護過程は,網羅的に情報を収集し,立ち止まりアセスメントし,問題を特定します。したがって,「網羅的に情報に収集しないとアセスメントができない」「計画が立たないと看護ができない」という状況が生じてきます。「その場の状況や患者の変化に気づく能力」「網羅的ではなく,必要な情報を収集する能力」「何をすべきか推論する能力」,このような臨床的な思考の育成が,今の基礎教育に欠けているのではないかと思うのです。患者の病状が変化して計画が立たなくても,実践が求められる場面は多々あります。それに対応する教育をこれまで,卒後教育に任せていたように思います。
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