連載 リズムとからだ 「うまくいく」と「うまくいかない」の謎・7
からだとの駆け引き
伊藤 亜紗
1
1東京工業大学リベラルアーツ研究教育院
pp.854-857
発行日 2017年10月25日
Published Date 2017/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200849
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前回,吃音とは「自分のからだの予測できなさ」に向き合う障害だと書きました。「〇〇」と言いたいと思う。けれども,からだ(声道)が思うように動いてくれるとは限らない。この意識とからだの緊張関係から,難発が生じます。
意識によって制御しきれないところに困難があるのですから,対処するにしても正攻法で制御しに行ってはうまくいきません。言ってみれば,気まぐれな猫に言うことを聞かせるようなもの。命令や指示とは違う仕方で,からだとうまくやる必要が生じます。この一筋縄ではいかないところが,吃音のおもしろさであり,奥深さです。
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