連載 間の間・9
交換しましょ、そうしましょ—「お客さん、タクシーいらない?」「じゃあ、広場までお願いします」「いくらで?」
伊藤 亜紗
1
1東京工業大学リベラルアーツ研究教育院
pp.527
発行日 2019年11月15日
Published Date 2019/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200675
- 有料閲覧
- 文献概要
『王子と乞食』という児童文学がある。有名な話なのでご存知の方も多いと思うが、ともに自分の境遇を憂いていた王子と乞食が、互いの立場を入れ替えて生活するというマーク・トウェイン作の物語だ。王子は乞食に、乞食は王子に。「対」になる2人が入れ替わるという話は、これ以外にもさまざまな例がある。
確かに実生活の中でも、対になる2つの立場が入れ替わるような感覚を持つことはある。たとえば、「教えることこそ最大の学び」。自分1人で理解してわかった気になっていたことも、いざ人に教えようとするとしどろもどろになったり、相手の鋭い質問によって新たな発見が生まれたりする。教えようとするとき、学んでいるのは実はこちらのほうなのだ。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.