連載 リズムとからだ 「うまくいく」と「うまくいかない」の謎・8
どもりたくてもどもれない
伊藤 亜紗
1
1東京工業大学リベラルアーツ研究教育院
pp.952-955
発行日 2017年11月25日
Published Date 2017/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200869
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前回,吃音のある人の多くが行っている「言い換え」についてお話しました。言い換えとは,どもりそうな言葉を直前で別の言葉や表現にすり替える吃音回避法です。ポイントは,必ずしも言いやすい言葉への変換が目的ではないこと。言えないという緊張から瞬間的に解放されることによって,からだと意識のあいだにあそびが生じ,言葉が出るようになるのです。からだを裏切ることによってうまくいくというやり方です。
言い換えは多くの当事者が自然に身につけ,実践している方法で,それ自体1つのしゃべり方と言っていいものです。しかし,その頻度やとらえ方によっては,言い換えながら話すことを苦しいと感じる人もいます。今回は,3年かけて言い換えることをやめた藤岡千恵さんのケースについてお話したいと思います。
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