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はじめに
超高齢社会の到来で,誤嚥性肺炎や窒息といった食事に関連した健康問題は,看護においても最重要課題の1つである。それらの社会的背景もあり,厚生労働省は,一昨年2月新人看護職員研修ガイドラインを改訂し,「摂食嚥下障害患者の食事介助」を「Ⅱ 指導の下でできる」から「Ⅰ できる」レベルに引き上げた。摂食嚥下障害患者の食事介助は,ポジショニング,呼吸管理,口腔ケア,個別リスク対応など,食事を開始するためには高度なアセスメント力と技術力が求められる。新人研修で「できる」レベルに達するのは,臨床の指導者の育成が急務であるが,同時に看護基礎教育にも一部は導入する必要性があると考えている。実習においても受け持ち患者の多くは摂食嚥下障害患者が含まれ,誤嚥予防や食事時のポジショニングは看護教員の必須技術となってきているからである。
本稿で紹介するPOTTプログラムは,従来の習慣的な看護技術を見直し,摂食嚥下障害看護認定看護師とともに試行錯誤を繰り返し創造した臨床知である。“ポジショニング(PO)で食べる(T)喜びを伝える(T)”略称であり“呼びやすく,わかりやすい”ネーミングにし,“看護の心と技”を全国へ伝えている。
本プログラムの目的は,①ポジショニングで食べる喜びを伝える,②食事の自立を支援し,誤嚥を予防する,③摂食嚥下機能に沿った食事介助をする,④教育方法開発と普及,⑤看護師の技術力や教育力向上,である。同プログラムは,実習においても十分に活用でき,適切なポジショニングは患者の食事の自立支援や食べる喜びを引き出すことにつながる1, 2)。学生はその過程から看護の素晴らしさを体感し,さらなる探求心が育まれると確信している。学内演習や実習へぜひ導入していただきたいと願いながら稿を進める。
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