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緒言
近年,看護基礎教育において,先輩看護学生参加型で学生同士の学び合いを促進する協同学習の効果を検討した研究がみられる1, 2)。“教えられてきた”先輩が後輩を“教えていく”といった教育システムは,屋根に敷かれた瓦にたとえ,「屋根瓦式教育」といわれている。北見ら3)は,屋根瓦式教育で学生の学習効果が向上する理由として,教員よりも先輩には気軽に,かつ聞きにくいような基本的な質問ができることを示している。自分と同じ状況で,同じ目標をもっている人の成功体験や問題解決技法を学ぶことを“代理的体験”というが4),学生にとっては,教員が教えるよりも,自分たちと同じ境遇にある身近な先輩の成功体験や学習方略を学ぶことで,不安が軽減し,実習に対する自己効力感を高めることにつながるのではないかと考える。
本学の慢性看護学領域では,2013(平成25)年度より, 4年次生が,実習前の3年次生に対して学習支援する屋根瓦式実習前演習(以下,演習)を取り入れており,これまでのわれわれの研究で,“教えられる側”である3年次生への効果として,実習に対する不安の軽減や人間関係形成や基本的看護技術に関する自己効力感の向上をもたらしたことを報告している5)。しかし,対象者数が少なかったこと,その場での学びがその後の実習への行動や思考にどのように活かされたのかを評価するまでには至っていないことが研究の限界としてあげられた。看護とは実践の科学であり,講義や演習で学んだ知を実践で統合することを通して学生は学びを深めていくものである。
本研究の目的は,屋根瓦式実習前演習前後の学習者における自己効力感,不安の変化,演習が臨地実習でどのように活かされたのか,を明らかにし,“教えられる側”である3年次看護学生への効果について検討することである。
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