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父親になる喜びとは
菱山 修三
pp.46-49
発行日 1954年11月1日
Published Date 1954/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200737
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結婚してから幾年たつても子供がなく気楽そうに見えるけれども,なんとなく落ちつきのない感じの夫婦が世間にはよくあるものだ.
わたしたち夫婦も,やはり世間のひとからそんな風に見られていたに違いない。いままで子供がいなくても,わたしは別に淋しいとは思わなかつた.が,妻はときどき考えこみ,まるでわたしに催促するように子供がほしいわといつた.子供がないと生きている目的がなくなるような気がするともいつた.わたしは不憫に思つたが,どうしようもなく当惑するだけであつた.結婚し,妊娠し,子供を持つ,——それが女性の完成だとすれば,女性の完成とはなんとみすぼらしいものだろうなどと,わたしはひそかに思つたものだ.これこそ男性的エゴイズムというものであろう.
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