特集 学生の答え,ちゃんと待てますか 今こそ知りたいファシリテーションの心構え
教師像の転換「教える」から「ファシリテーション」へ
石川 一喜
1
1拓殖大学 国際学部
pp.1050-1055
発行日 2015年11月25日
Published Date 2015/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200376
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日本の教師たちの今
現在の教師たちをとりまく環境は厳しい。2014年6月に報告されたOECD(経済協力開発機構)の国際教員指導環境調査(TALIS)*では,日本の教師が最も労働時間が長く,多忙を極めている現状が明らかとなった。1週間あたりの勤務時間は53.9時間で,参加国平均の38.3時間を大きく上回っているのだ。その内訳を見れば,「指導(授業)に使った時間」は17.7時間(この数値も参加国平均を下回っている)で,3分の1程度にすぎない。参加国平均と比較して,このほか極めて時間を取られているのが「一般的事務業務に使った時間」(日本5.5時間,参加国平均2.9時間)と「課外活動の指導に使った時間」(日本7.7時間,参加国平均2.1時間)である。そのため,勤務外の時間にしわ寄せが及び,「学校内外で個人で行う授業の計画や準備に使った時間」(日本8.7時間,参加国平均7.1時間)に長い傾向がみられる。
この問題は非常に深刻で,当然改善されるべきなのだが,実はこの調査で特筆すべきは別のところにある。目を向けるべきなのは,この現象が引き起こす結果のほうで,多忙を極めている現場が教師自身の自信を喪失させてしまっている。調査では,「教員の自己効力感と仕事に対する満足度」に関する質問事項の値が総じて低く,疲弊する現場と教師の自己効力感のなさが相まって,日本の教育現場は負のスパイラルに陥っていると考えられる。
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