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はじめに
「看護研究は,臨床に始まり,臨床に終わる」1)といわれるように,臨床での看護実践のなかで研究の原点となる疑問の種を感じることは少なくない。しかし,臨床で働く看護師が日々の看護業務に追われ,忙しさや慌しさのなか,そこから看護研究へと発展させていくことは容易なことではない。
近年の看護系大学の著しい増加に伴い,若い看護師にとって「看護研究」はさほど馴染みのないものではなくなった。短大・専門学校では,大学に比べ,大学院入試や入学後に必須となる英語や看護研究に関連した科目の単位数が少なく,短大は大学の約半分,専門学校は大学の約3分の1の単位数であることが明らかである2)ことからも,大学卒の看護師は,看護研究についての学びを深めていると言える。それでもなお,看護研究は,臨床現場のなかで発展することに困難を極めている。それは,看護業務による多忙さだけが理由ではないように思う。
筆者は,中堅看護師世代になったとき,病棟のなかで割り当てられた役割として,チームで看護研究に取り組むこととなった。それは,看護研究が病院内での教育活動の一環となっていたためである。つまり,Research Question(研究疑問)ありきで始まった研究ではなかった。
しかし,冒頭で述べたように,日々の看護実践のなかで,糖尿病患者への看護についてさまざまな疑問を感じながらもどのように研究につなげていけばよいかわからないという経験をした。
さらに,自身が副看護師長になった時には,看護研究や卒後3年目看護師の事例研究の指導を担うこととなった。研究について専門的に学習したことがなかったため,疑問や悩みを抱えながら指導を行っていた。
このように自身の経験から,臨床現場で看護研究を行っていくには,看護業務の多忙さだけではなく,研究する側の意識の問題から始まり,指導する側の指導力の問題などさまざまな問題があると感じている。
本稿では,臨床現場での看護研究を推進していくため,現状感じられている課題点について述べたい。
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