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本連載の語り手である中西睦子先生は,特に1980年代以降,日本の看護教育が4年制大学あるいは大学院教育へと踏み出し,アカデミズムとしての自覚や確立に向けて走り始めるなか,看護学や看護学教育のパイオニア,そしてリーダーとして活動されてきた看護界の重鎮のおひとりである。
私,松澤は,中西先生が学科長として赴任された大学で,約5年間上司と部下(しかも臨床しか知らない新任教員という私)という関係で,思いもよらない充実した教員経験を重ねる機会を得た。私自身にとってそれは,一言でいうと「衝撃」としかいいようのないものだった。それゆえに気がついてみると,私の頭のなかには,いくつもの中西先生語録が格言化して染みついてしまった。それは,中西先生独特のラディカルな思想が,ウィットやユーモアと共に,一度頭に入ったら忘却困難な固有のスパイス(時に「薬味」レベルをこえて「劇薬」ともいえるような)を伴ったものとしてであった。私はそれ以来,中西先生の格言を日頃のよりどころとしつつ大学教員を続けてきたといっていい。
そのようななか私は,『看護管理』(22巻10号)の林千冬先生との巻頭対談で久しぶりに中西先生の切れ味衰えぬ言葉にふれ感激を新たにした。そして,なんとかしてこれらのユニークな言葉(格言)の数々を記録したいという思いが募り,このたび,中西先生とのかなり集中的なインタビューを実現することができた。その結果を,いくつかのテーマごとに整理しつつ若干の補遺をつけてまとめたものが今回の連載ということになる。中西先生による,いわば「看護学の存在意義」そのものさえ問おうとする,スリリングで自由な批判精神とその固有な表現のあり方の一端を,ここにお伝えできればと考えている。
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