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はじめに
保健師国家試験(以下,保国試)は,保健師助産師看護師法(以下,保助看法)に定められた保健師として必要な知識および技能等の基礎的能力を評価する試験であり,厚生労働省が管轄している。2006年の保助看法改正により,保健師になろうとする者は,保国試および看護師国家試験(以下,看国試)に合格しなければならない。保健師は,看護師としての基礎的能力を有し,さらに保健師として必要な知識および技能を身につけた者として資格認定される1)。
保国試においては,看護系大学の急増と保健師看護師統合カリキュラムに伴い,受験資格を有する者が年々増加し,2007年以降は,毎年約1万2000人が保健師免許を取得しているが,その免許を活かして就業している者はわずか10%程度である2)。
国家資格を与える国家試験は,その質保証が重要であり,その課題のひとつに,試験問題の難易度が望ましい水準に安定していることが挙げられる3)。近年の保国試合格率は,看国試に比べ変動幅が大きく,2005年81.5%,2006年78.7%,2007年99.0%,2008年91.1%,2009年(第95回)97.7%,2010年(第96回)86.6%と難易度は安定していない。このことは,需要に比して供給が過剰で,かつ実習体制の不備による公衆衛生看護技術習得の未熟さや卒業時の到達度が低いなど4, 5)教育の質の低下が問題となっている保健師教育に関して焦眉の急の課題である。
医学教育の分野では,国家試験のあり方について,科学的根拠をもって分析検討する方法として修正イーベル法が開発されてきた3)。修正イーベル法とは,試験を構成する問題単位の「難易度」を考えると同時に,その問題が到達目標やその後の学習ないし社会活動展開との関連性において,どの程度重要かという「必要度」を判定し,2次元的に合格水準を設定しようとするものである3)。
全国保健師教育機関協議会(以下,全保教)は,1981年創設当初から国家試験対策委員会による保国試の全国調査を毎年実施し,不適切問題や試験環境の改善を厚生労働省に提言している。本稿では,第95回および第96回の保国試分析に修正イーベル法を用いて,受験者評価の視点から難易度分析を試みたので報告する。
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