第2特集 看護学生論文─入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
もう後悔はしない
福浦 有希子
1
1出水郡医師会准看護学校2年
pp.702-703
発行日 2013年8月25日
Published Date 2013/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102476
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私が准看護学校に入学した理由は,「看護師にあこがれて」とか「人のためになる仕事をしたい」という考えからではなかった。病気について何もわからない私。そんな私を母の病が入学へ後押しした。当然,知識だけがほしくて。
母の病は手術により,完治したかに見えた。しかし,4か月後には再発し,術後の抗癌剤治療は効果がなかった。「どうして再発したのか」。今も疑問を感じたままでいる。ただ,母の病は治らないものだと理解できた。家族や当の本人は覚悟を決めているように思えた。そして,緩和ケア病棟へ入院した。家族が必死に看病するなかで,私は母にどのように接したらいいのかわからず,二人きりになることから逃げ,時間だけが過ぎていった。そんなとき,父から「もう危ないから面会に行け」と言われたが,なかなか病室へいこうとしなかった。私は,「まだ母がいなくなるわけがない。大丈夫だ」と自分に言い聞かせ,変わりゆく母の姿と「死」という言葉を思い浮かべてしまうのが嫌でたまらなかった。母の死を受容することはできない。
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