連載 Mail from USA 『JNE』を読み,世界の看護教育の流れを知る・49
患者の積極的な健康増進をサポートする看護師を育てる
神谷 英美子
1,2
1カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)大学院博士課程
2アジア・太平洋諸島健康管理センター
pp.442-443
発行日 2013年5月25日
Published Date 2013/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102403
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再び注目を集めているヘルスプロモーション
基礎研究の進歩で,遺伝,環境や生活習慣が人々の健康に多大なる影響を与えていることがわかってきました。また臨床研究のおかげで,さまざまな疾患の予防や早期発見・治療が可能になりました。そんななか,生活習慣病や慢性疾患が大きな問題になっている今日このごろ,急性疾患や偶発病変の治療や介入だけでは,十分な医療とはいえません。これらの研究の進歩の恩恵を受け,人々の健康の維持や促進,年代に応じた病気や事故の予防,疾患の早期発見が必要とされます。
このような流れのなか,1986年にWHO(World Health Organization:世界保健機関)の国際会議で提唱されたヘルスプロモーション(健康増進)が再注目されてきています。ヘルスプロモーションとは,「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし,改善することができるようにするプロセス」。この視点は,医療者たちが指導し患者はそれに従うこととなりがちだった,それまでの医療のあり方を見直すきっかけをつくりました。ヘルスプロモーションの考えでは,患者は受け身にならず,自らが主役となり健康維持を積極的に行います。そして,そのサポートとして,医療者たちは専門的な視野からアドバイス,地域社会は健康を支援する政策や環境づくりの手助けをします。また身体的の健康だけでなく,精神的に快適に健全で心も満たされることを目指す,ホリスティックな視野をヘルスプロモーションでは求めています。そのためにも,患者自身が自ら促進して必要な知識,価値観,スキルを身につける必要があります。
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