特集 基礎看護学を再構成する・1 看護の「基礎」とは何か?
看護の「基礎」って何だろう?―ゆるがない「基礎」をつくるために
川島 みどり
1,2
1日本赤十字看護大学
2臨床看護学研究所
pp.6-11
発行日 2013年1月25日
Published Date 2013/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102284
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「普通の暮らし」を知ることから始まる
「看護の基礎って何?」というのは,とても難しい問いです。看護の対象は命ある人間ですから,「看護の基礎」といったときには,看護をする側の立場と看護を受ける側の立場,この両方で考えないといけません。相手をどう理解するかということでは,命というもの,人間というものの理解が重要です。なかでも特に人間を知るうえでは,「暮らし」を理解するという要素が強くなくてはならないと思います。
理論としての看護は,対象を総合的に見るという意味から,心身面,生活行動面,社会面からのアプローチをして来ていますが,実際にはどうしても,生物体としての人間,病気をもっている人をどうみるか,病んだ人をどうお世話するかというところに主眼をおきがちでした。恐らくこれからは,暮らしの面からその人を理解することが強く求められ,普通に暮らしている人の状況や気持ちがわかるということが「看護の基礎」になると思います。それは,私が今回の大震災で被災地に行って特に強く感じたことから来ています。つまり,地震や津波や原発事故で失われたものは多くありますが,なくなってしまった暮らしの多様性に思いを馳せないと,そこでのケアが成り立たないと考えたのです。
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