連載 実習の経験知 育ちの支援で師は育つ・13
“お手本”との出逢いの支援―指導者─教員関係の文脈
新納 美美
1
1北海道大学大学院理学院自然史科学専攻
pp.818-822
発行日 2012年9月25日
Published Date 2012/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102200
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指導者との出逢い
典型的なサラリーマンの核家族に生まれ,幸いにも病気知らずで育った私にとって,看護はあまり縁のない職業でした。あえて人に向き合う仕事をしたいと思ったこともなく,高校生の頃は,好きだった物理を活かして工学系に進む予定でした。ほんの一瞬の出逢いから看護師の行為に関心をもち,将来的な生活の安定など現実的な諸条件も重なって,看護の道を選択したのです。その頃の私のなかには具体的な看護のイメージがなく,各論実習に出てはじめて“ナマの看護”を観たという状態でした*1。
何と言っても忘れられないのは,初めての各論実習で出逢った指導者Oさんです。彼女によって,私は,当時抱いていた“勉強して資格を取れば看護師として働ける”という幼いシナリオを書き換えることになりました。彼女は私に「看護師が患者を観るってどういうことなの?」と繰り返し問い続けます。対話するたびに,頭の中身の改造を迫られる思いでした。それがあまりにも強烈で,私の強い関心は,Oさんの“看護師として人と接する姿勢”に向けられました。はじめの数日はその迫力にビクビクするだけでしたが,次第に彼女の厳しさが患者さんに対する責任と人間としての優しさからくるものだということに気づきました。私は,Oさんの後ろ姿から,看護師が対象者と真摯に向き合う姿勢の重要性を学びました。私に,“ナマの看護”を教えてくれたのは,現場の第一線で働く指導者だったのです*2。
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