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はじめに
筆者は専修免許状をもつ養護教諭である。看護教育に携わることはないが,4年制看護大学(学部)出身の養護教諭とは,「養護教諭同士」としての関わりがある。
今回取り上げるのは,保健師免許に付随する二種免許ではなく,4年制看護大学(学部)で看護師や保健師免許の受験資格を取得するとともに,学校で養護実習を行い,養護教諭一種免許を取得するケースである。ここでは,このような養護教諭を「看護ベース養教」と呼ぶことにする。
看護ベース養教は,医療に関する知識と技術が国家試験により担保されているもの,という認識が学校の教員側にある。ところが最近,看護ベース養教のなかから,「煮沸消毒器を見たことがなく,使用方法を知りたい」「耳鼻科用,歯科用,ガーゼ用の鑷子がわからない」「滅菌パックに入った器具が,滅菌済みかどうかを見分ける方法は?」という質問が,ときどきではあるが,筆者に寄せられるようになってきた。これは学校現場で,OJTにより学ぶことではなく,免許取得の段階で学んでくることである。しかし,他の養護教諭養成課程出身者ならともかく,看護ベース養教に基本的な知識や技術がないのはなぜなのか? 筆者にはそれが大きな疑問であり,学校としては困ったことなのだ。
養護教諭が,「検診器具の種類や消毒方法を知らない」ということは,学校現場では,英語の教員が,「英語が読めない」ということと同様で,まずあり得ないことだと思うが,いかがであろう。これらはほんの数例の特別なケースなのだろうか?
筆者の医療ベースは歯科衛生士である。大学病院や二次医療機関の口腔外科臨床の勤務経験がある。大学院修士課程では小児保健や児童福祉研究を行った。その後養護教諭として普通校および特別支援学校に20年以上勤務をした。現在は養護教諭であると同時に,臨床心理学を学ぶ大学院生である。さまざまな立場の養護教諭の相談を受けている。心理や生徒についての相談のほか,最近は特に看護師ベースの新人養護教諭の相談「困っていること」のために学校を訪問したり,メールカウンセリングを行ったりしている。
このような訳で今回,筆者は,養護教諭とカウンセラーという両方の立場から,正採用,臨任を問わず,新人の看護ベース養教について,先述のような事例がなぜ起こるのか,看護教育のなかでの養護教諭養成について,その評価と筆者の意見を述べていきたい。
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