連載 Mail from USA 『JNE』を読み,世界の看護教育の流れを知る・24
コンプレキシティ科学と看護教育の接点
喜吉 紘子
1,2
1カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)大学院博士課程
2UCSF大学病院
pp.332-333
発行日 2011年4月25日
Published Date 2011/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101741
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【主な論文】「コンプレキシティ科学とPBLで新人ナースを育てる」から
今回,気になったのはホッジ氏の「コンプレキシティ科学とPBLで新人ナースを育てる」でした。皆さんはコンプレキシティ(Complexity)科学/理論のことをご存じですか? アメリカの看護学界でも知る人は少ないですが,システム理論,変化理論,カオス理論の親戚と言えるものでしょう
私の場合,博士研究の準備をしていたときに「コンプレキシティ理論」に出会いました。あらゆる領域で利用されている理論ですが,その生まれは社会学です。1960~70年代の社会学で発展した「システム理論(systems theory)」は直線的で閉鎖的であることが特徴でしたが,そのアプローチには限界があったことから,その逆の特徴をもつコンプレキシティ理論(現象は非直線的に発生し,開放的でさまざまな外部要因の影響を受ける)が芽生えたわけです。医療においては,1990年代から活用されるようになり,現在では医療システムを理解するために有用な理論枠組みと考えられています(Begun J, Zimmerman, & Dooley, 2003)。なぜ医療システムを理解するのにコンプレキシティ理論が適切といえば,医療は人間が提供するものであり,人間の相互作用性や感情や習慣などの性質を組み入れているからです。
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