連載 教育と研究,臨床をつなぐメッセージ やっぱり私は,看護師だった!・2
〈全体像の理解〉の難しさと大切さ
那須 あい
pp.123
発行日 2011年2月25日
Published Date 2011/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101677
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成人畑を歩いてきた私にとって,子どもの身体計測は,とてつもなく難しい。安全を守り,正確に計測するだけで必死。ある日,発達の遅れのある子の暴れる体を固定しようとして頭をコツンとぶつけてしまった。すぐに謝ったものの,一緒にいたお父さんになじられ,つい自己弁護のセリフを吐いた。お父さんは私を罵倒し,激昂。リーダー看護師がフォローに入り,担当医も顔を出す。「もう,辞めたい」と思った。
「辞めたい」と思うたびにしてきたように,この出来事を反芻し,振り返った。あの子は,白衣の人間に触られることに心底怯えていた。父親は体外受精をしてやっと授かったわが子に恐怖を強いる苦悩に耐えていた。でも,あの時の私には,その文脈への思いが無かった。そう気づいたとき,「全体像」という言葉が浮かんだ。
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