書評
―『摂食障害のセルフヘルプ援助 患者の力を生かすアプローチ』―看護教育は「学生の力を生かす教育をしているか?」という問い─指導ではない援助を考える
米山 奈奈子
1
1秋田大学大学院医学系研究科
pp.1088
発行日 2010年12月25日
Published Date 2010/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101632
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本書は,摂食障害の治療において,『本人のセルフヘルプを援助する』姿勢が非常に重要なのではないかという著者の姿勢に基づいて書かれている。著者がイギリスで研究していた時期に,医療システムや組織の違いを超えて,多くの学びの基本にあったのが,こうした治療態度であったという。本来どんな患者であれ,もともとその人が持っている力を最大限に活用できるような支援が重要であるはずなのだが,そうしたことに着目できなくなっている日本の医療制度や現場の問題も大きいのかもしれない。また,摂食障害は,看護学生にも決して珍しくない疾患である。単なるダイエット,失恋やいじめ等がきっかけであることも多いが,背景には複雑な家族問題やトラウマが隠れている場合もある。加えて,学生自身が自ら不調を訴えて相談に来る場合はまれで,どちらかというと周囲に気づかれて問題が浮上する場合が多いのではないか。治療に繋がっても,症状が遷延化する場合もあり,危機的身体症状やうつ・自傷行為など,さまざまな合併症を呈する場合は特に,この疾患そのものをどのように理解し,どのような関わりが,摂食障害を抱える学生への支援になるのかと思い悩む教員も多いのではないだろうか。
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